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能年玲奈(のん)が事務所を退所した経緯が垣間見える裁判

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現在、ドラマ「ミス・キング」の主演をはじめ女優として大活躍されているのんさんは、かつて「能年玲奈」という本名で「レプロエンタテインメント」という事務所に所属して活動しておりました。
 
2016年6月にこの事務所を退所して、そのタイミングで「のん」に改名をして活動をすることとなったのですが、当時はその退所や芸名の改名等が週刊誌等でも話題になりました。
 
そうした、能年玲奈さんの当時の芸名の改名や退所等についての週刊誌記事のうち、週刊文春に掲載された記事によって、能年玲奈さんがかつて所属していた「レプロエンタテインメント」という事務所が、名誉を棄損されたとして週刊文春を発行する文芸春秋社に損害賠償を求めて訴えたという裁判(東京地判平成31年4月19日 平成27年(ワ)第15736号)がございます。
 
この裁判では、能年玲奈さんの退所までの経緯が色々と垣間見える点が非常に興味深いところもありますので、今回はこの裁判から垣間見える能年玲奈さんの退所までの経緯をまとめてみます。
 

【能年玲奈の退所までの経緯】

 
・2006年9月21日
能年玲奈さんがレプロエンタテインメントに所属する(専属芸術家契約を締結する)。能年玲奈さんは、所属後しばらくめぼしい仕事がなかったようだが、2013年4月1日から放送されるNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」の主演女優に抜擢されることとなる。

・あまちゃんの撮影が開始されるまでの間
能年玲奈さんの給与は月給5万円であった。その他に寮の家賃、食費、光熱費、交通費、ヘアメイク・スタイリング費等を事務所が負担していた(年間約360万円)。

・2013年4月1日~
NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」放送開始。放送開始から3か月の時点で、能年玲奈さんの給与が月給20万円に増額される。また、能年玲奈さんは住居を転居し、最終的な住居の家賃は月額30万円ほどで、これを事務所が負担していた。なお、2011年頃からあまちゃんの撮影が終了するまでの間、能年玲奈さんのマネージャーが計6人交代している。

・あまちゃんの放送終了後(2013年9月28日以降)
事務所が能年玲奈さんに対して賞与として200万円を支給。事務所が能年玲奈さんに対し新たな作品への出演を提案したところ、能年玲奈さんからマネージャーに対し、「海月姫以外は出来ない気がしてます。」とのメールが届く。

・2014年
映画「海月姫」、「ホットロード」にて能年玲奈さんが主演を務める。尚、「ホットロード」への出演は、「あまちゃん」への出演が決定する前に決定していた。2014年に入り、能年玲奈さんから事務所に対し、2014年6月末の期間満了をもって退所する(専属芸術家契約を更新しないことを希望する)旨の通知をしたが、事務所は契約更新を求めた。この時点から能年玲奈さんは弁護士に依頼して事務所を退社できるよう協議を進めていったが、協議は難航した。

・2014年3月
この頃、映画「進撃の巨人」(おそらく実写版)の監督が、映画「進撃の巨人」の主演級のポジションで能年玲奈さんを起用したいということを、事務所を通さずに直接能年玲奈さんに伝えるという出来事が起きる。これに対し事務所が、映画「進撃の巨人」の制作会社である東宝に抗議し、その結果、能年玲奈さんの映画「進撃の巨人」への出演の正式オファーがされることはなくなった。また、別でNHKから人形劇への声優としての出演及び戦争を題材とした特別ドラマへの能年玲奈さんの出演の依頼があった。

・2014年5月7日
マネージャーから能年玲奈さんに対し、「進撃の件ですが、うちが断ったのではなく、東宝が取り下げたというのが事実です」という旨のメールが送信され、それに対し、能年玲奈さんがマネージャーに対して、「事務所はいつも、私の意向を丸無視で仕事を進めていますよ。レプロさんが私にすり寄ってくださったことは一度もありません。あまちゃんを演じた、死を描かずに絆を確認するというテーマの中で生きた私が、戦争ものに出るというのは出来ません。絶対に出来ません。やると言われても私は現場に行きません。行ったとしても、怒りでどうにかなって、所構わず怒鳴り散らします。では、そちらの意向を聞かせてください。何故、戦争ものなのか。何故、人形劇なのか。私の意見は毎回毎回言わせていただいています。頭に入っていないのなら関係性もなにもないですよ。何もなくただやりますというのは関係性としてどうかと思いますよ」というメールを送信した。

・2015年1月21日
上記NHKの人形劇への声優としての出演及び戦争を題材とした特別ドラマへの能年玲奈さんの出演の依頼は結局断ることとなった。また時期は不明だが、テレビドラマ「学校のカイダン」への出演依頼を能年玲奈さんが拒否したとのこと。そして、2015年1月21日に、「株式会社三毛andカリントウ」という会社を能年玲奈さんは設立する。この会社は、能年玲奈さんが代表取締役を務め、演技指導を行っていた女性が取締役を務めている。この会社の目的に、「タレント・俳優等の養成及びそのマネジメントに関する業務並びに芸能プロダクションの経営」が含まれていたことから、事務所はこの会社の設立が事務所と能年玲奈さんとの専属芸術家契約に明らかに違反する行為だと認識する。

・2015年4月28日
「衝撃スクープ 国民的アイドル女優はなぜ消えたのか?本誌直撃に悲痛な叫び「私は仕事がしたい」」と題する記事が掲載された週刊文春が発売される。この記事に関しては、能年玲奈さんと共に「株式会社三毛andカリントウ」という会社を設立した演技指導の女性が週刊文春の取材に応じ(時には能年玲奈さんも取材に同席したようである)、「あまちゃんの撮影が多忙で衣服の洗濯が間に合わないことがあったこと」「能年玲奈さんの月給が5万円であったこと」「マネージャーが次々と交代したこと」「進撃の巨人の監督が能年玲奈さんの起用を検討していたが実現しなかったこと」といったことを話す。尚、記事は能年玲奈さんの確認も経た上で掲載されたようである。

・2016年6月
能年玲奈さんが事務所を退所し、「のん」に改名をして活動をすることとなる。

・2018年10月上旬頃
能年玲奈さんがレプロエンタテインメントに対し、謝罪をした上、もう一度マネジメントを依頼した旨を申し入れ、レプロエンタテインメントの関係者と面談をした。
 
 
この裁判は、週刊文春の記事によって能年玲奈さんがかつて所属していたレプロエンタテインメント及びその社長の社会的評価を低下させると認められるとして、名誉棄損が認められ、週刊文春を発行する文芸春秋に対して合計660万円を支払うようにという判決となりました。
 
メールのやり取りの生々しさや、映画「進撃の巨人」に起用される可能性があった点など、退所に至るまでの経緯は非常に興味深いものがありますが、こうした退所に至る経緯に関していくつか見解を次の記事で書きたいと思います。
 
 

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