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タレント等が会社設立することは事務所との所属契約に違反するのか

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前回、「能年玲奈(のん)が事務所を退所した経緯が垣間見える裁判」という記事を書かせて頂きました。
 
この記事では、現在、ドラマ「ミス・キング」の主演をはじめ女優として大活躍されているのんさんが、かつて「能年玲奈」という本名で「レプロエンタテインメント」という事務所に所属して活動し、その後退所に至るまでの経緯を、事務所と文芸春秋との裁判の内容を通じて書いたものとなります。
 
この裁判は、当時、能年玲奈さんの退所等について週刊文春に掲載された記事によって、能年玲奈さんがかつて所属していた「レプロエンタテインメント」という事務所が、名誉を棄損されたとして週刊文春を発行する文芸春秋社に損害賠償を求めて訴えたという裁判(東京地判平成31年4月19日 平成27年(ワ)第15736号)なのですが、この裁判では、能年玲奈さんの退所までの経緯が色々と垣間見える点が非常に興味深かったので前回記事としてまとめて書いた次第です。
 
こうした能年玲奈さんの退所までの経緯の中で、タレント等と事務所との契約(専属マネジメント契約・所属契約)という観点から、1点気になる点がございましたので、今回はそのことについて書かせて頂きます。
 
【タレント等が会社設立することは事務所との所属契約に違反するのか】
 
能年玲奈さんは、事務所と「専属芸術家契約」を締結して事務所に所属して活動をし、NHKのテレビ小説「あまちゃん」に抜擢されて大ブレイクすることとなりました。しかし、その後、映画「進撃の巨人」やNHKの人形劇・戦争ものの特別ドラマへの出演についてや報酬の金額等をめぐって能年玲奈さんと事務所との関係性が悪化していきました。
 
そうした関係性が悪化していく中で、能年玲奈さんは、2015年1月21日に、「株式会社三毛andカリントウ」という会社を設立することとなります。この会社は、能年玲奈さんが代表取締役を務め、演技指導を行っていた女性が取締役を務めています。そして、この会社の目的に、「タレント・俳優等の養成及びそのマネジメントに関する業務並びに芸能プロダクションの経営」が含まれていたことから、事務所はこの会社の設立が事務所と能年玲奈さんとの専属芸術家契約に明らかに違反する行為だと認識するようになります。
 
しかしここで疑問点があるのですが、このようにタレント等が会社を設立することが、事務所との契約に違反することとなるのでしょうか。事務所は、会社の目的の中に「タレント・俳優等の養成及びそのマネジメントに関する業務並びに芸能プロダクションの経営」が含まれていることを問題視しているようですが、このような目的の会社を設立するだけで即座に事務所との契約違反になるのでしょうか。
 
通常、タレント等と事務所との契約(専属マネジメント契約・所属契約)においては、タレント等のマネジメントを事務所に専属的に依頼し、タレント等は、事務所のためにのみ芸能活動を行う、といった形になります。
 
よって、例えば能年玲奈さんがマネジメントを別の事務所に依頼したり、別の事務所のために芸能活動を行ったりすれば契約違反になります。
 
しかしながら、上記の会社設立をしただけの段階では、それだけでマネジメントをその会社に依頼することにはならないですし、その会社のために芸能活動を行ったりしていることにはならないです。
 
能年玲奈さんとその設立した会社との間で、別途専属マネジメント契約や所属契約等が締結しているのであれば確かに、所属事務所との契約に違反することになるでしょう。しかし、裁判からはそのような話までは出てきません。
 
また、能年玲奈さんが上記のような会社を設立したとしても、設立しただけで何ら活動実態もないような会社であれば、これも所属事務所との契約に違反することにはならないと考えます。但し、例えば、その設立した会社を通じて能年玲奈さんのグッズを販売したり、設立した会社の名前でテレビ局等に売り込み等をしていれば、所属事務所との契約に違反する可能性が出てきます。
 
しかしながら、これについても裁判からはそのような話までは出てきません。
 
もし、能年玲奈さんと事務所との契約(専属芸術家契約)の中で、「タレント等は、事務所の承諾を得ずに芸能に関する法人を設立してはならない」と明確に書かれていれば能年玲奈さんに契約違反の可能性が確かに出てきますが、おそらくそのような記載は契約書にないであろうと思います。
 
私もこれまで長年数多くのタレント等と事務所との契約を見てきましたが、そうしたタレント等の法人設立に制限をかけるような文言を契約書に盛り込むような事例はほとんどありませんでした。
 
また、タレント等は、ある程度売れっ子になってくると、節税対策等のために個人的な法人を設立することはよくあることです。その場合、タレント等自身や親族が代表取締役になったりします。
 
このように、タレント等が節税対策で法人設立する場合があること等を踏まえますと、上記のように能年玲奈さんが会社を設立しただけで事務所との契約に違反することになるかというと、おそらくならない可能性が高いのではと思います。
 
 

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藤枝秀幸

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2009年に当事務所を設立し、著作権等の知的財産権の専門家として、主にIT系、エンタメ・芸能・コンテンツ系のクライアント様やクリエイター様等から多数の契約書(英文契約書含む)作成・リーガルチェック業務のご依頼を頂いております。
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