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前回のコラム「タレント等の芸名を使用する権利は誰のものなのか」において、タレント、俳優、アーティスト、アイドル、声優等(以下「タレント等」といいます)の芸名を使用する権利が誰に帰属するのか、ということを書かせて頂きました。
裁判例に基づけば、基本的にはタレント等本人にその芸名を使用する権利やパブリシティ権が帰属すると考えられると前回書きましたが、それでは、事務所がその芸名を商標登録している場合はどのようにすれば良いでしょうか。
【公正取引委員会の指針に基づく考え】
タレント等の芸名を商標登録しているケースはいくらか見受けられます。「松田聖子」、「小泉今日子」、「中山美穂」、「安室奈美恵」、「加護亜依」などの芸名が実際に商標登録されております。一昔前のタレント等の方が商標登録している割合が多いように見受けられますが、他にも、バンド名やグループ名の商標登録もあります。
旧ジャニーズですと、「SMAP」や「Kinki Kids」といったグループ名を商標登録していますね。
このように芸名が商標登録されているタレント等が、所属事務所を辞めることとなった場合、どのようにすれば良いのでしょうか。
2025年9月30日に公正取引委員会が発表した、タレント等とその所属事務所等が締結する契約の適正化のための指針の中でそのことが言及されております。
この公正取引委員会の指針は、タレント等とその所属事務所等が締結する契約(専属マネジメント契約、所属契約等)の実態調査を行った上で作成されたものですが、芸名・グループ名についての指針もあります。
公正取引委員会の指針に基づけば、タレント等がその所属事務所を辞める場合、以降のタレント等による芸名の使用に制限をかけてはならないとしています。よって、所属事務所が芸名の商標権をもっていた場合に、どのように取り扱えばよいかが問題となります。
この点につき、公正取引委員会の指針によれば、適正な事例として、「芸名を商標登録し、その登録費用を芸能事務所が負担した場合において、タレント等が退所する際に、残りの商標登録の期間分の費用についてタレント等に負担させた上で、芸名の商標権をタレント等に移転させた上で、芸名をタレント等に継続利用させた」というものがあります。
わざわざ適正な事例として記載しているということですので、公正取引委員会としては、芸名が商標登録されているタレント等が所属事務所を辞める場合は、そのタレント等に商標権を譲渡することが望ましいという考えなのだと思います。
実際、裁判例に基づけば、基本的にはタレント等本人にその芸名を使用する権利やパブリシティ権が帰属すると考えられるので、タレント等本人に商標権を譲渡する形が自然なところだと思います。
基本的にはタレント等本人にその芸名を使用する権利やパブリシティ権が帰属するという考えを突き詰めていくと、最初の商標登録の時点で、タレント等本人が商標権者となるように登録する形が良いのかもしれません。
しかしながら、実際にタレント等本人が権利者となって、その芸名が第三者に勝手に使われたりした際に、商標権を行使するのがタレント等本人ですと色々と負担も大きいでしょうから、事務所に所属している間は事務所が商標権者として管理する、という形であっても特段問題はないように思います。
また、タレント等が事務所を辞めて商標権をタレント等に譲渡することとなった場合、特許庁に登録商標の移転登録申請を行う必要がありますので、それを忘れずに行う必要がある点には注意が必要です。
尚、2024年に、「GReeeN」が所属事務所を辞めて「GRe4N BOYZ」に改名しましたが、これは、「GReeeN」が商標登録されていて、その権利を所属事務所が持っていたためにそうなったということのようですが、公正取引委員会の指針によれば、こういうケースでも、本来は「GReeeN」のメンバーに事務所が商標権を譲渡して、引き続き「GReeeN」の名前で活動できるようにすることが望ましいということになるのだと思います。
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